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心配で…

 投稿者:  投稿日:2011年 3月21日(月)21時10分6秒
  随分とご無沙汰しております。
いきなりの書き込みで申し訳ございません。
えみさまの事が心配でこちらに書き込みさせて頂きました。
東の地より、無事を祈ります。
 
 

もう誰も覚えていなくても

 投稿者:えみ  投稿日:2009年11月18日(水)21時51分40秒
  …もう誰も読んでなくても(笑)…

2009年11月18日
もう誰も覚えていなくても、
過去の遠い出来事になっても、
誰かの青春の1ページだとしても、
忘れられない。
ワタシは忘れない。
今日は風間一輝の10周忌だ
1999年11月18日、風間一輝は愛すべきキャラクターを連れてどっかにいっちまった

彼が生きてたらどんな烏堂がいたかな?室井は何してる?
とっても愉快な風間ワールドが綴られていただろう

小説に惚れたんだか、おっさんに惚れたんだか、
今もよく分からないまま、
【BD】に輪をかけて同人回帰させてくれたのは風間ワールド【片道切符】
だったんだよなぁ…と思いながら、
10年前の11月19日、新聞喪告にショックを受けてカラカラと歩道を転がる
木の葉を追っかけてみたのを思い出す

十年一日
この不況にクビにもならず、同じ仕事をしている
写植も版下も知らない連中相手に仕事をしている
「デザイナーって言うなら、言葉ぐらい通じてくれる!?」。

10年前、早々に上がるワタシに掛かる声は
「お疲れさん」「早いなや」「飲み過ぎるなよ」だったが、
今では
「お疲れです。お気をつけて」「ご苦労様です」「飲み過ぎないでくださいね」
(…?)。まるでどこぞの姐さんかと思う声に変わった
そりゃあ10年
暴れたわ、始末書も書いたわ
…貫禄もつくわな

時間は変わるものと変わらないものをひっそり刻んで、
ワタシ は いる
おっさんに会いたかったなぁ
おっさんに生きててほしかったなぁ
おっさんの愛すべきキャラクターと一緒にいたかったなぁ…

もう
誰も覚えていなくても、
風間一輝を、
彼とその世界を、
誰かが何かの拍子に思い出してほしい

…無理かも知れないけれど

おっさん、ワタシは忘れない
 

なんてこったい!!

 投稿者:えみ  投稿日:2009年 5月17日(日)22時11分32秒
  繁忙期は過ぎた
が、同業者のOさんのサイトも2月以来更新されてない…分かる分かる。うんうん
現実に多少のケリがついてもなんかぼんやりして、妄想は逞しくアレコレ考えてる
んだけど、コッチに帰って来らんないんだわ

「それってスポンサーがPなの?」「うん、P」。
「それはふたつの意味でえみちゃんは見ないほうがいいと思う」「…やっぱし?」
「やっぱし」。
フツーの月曜日は見らんないから、5月4日月曜日、相方には釘を刺されていたにも
関わらず、見ちまった【ハン●ョウ】…う、う、う…見るんじゃなかった!!
えーと、えーと、え~~~と、だな。それはそれ、これはこれで楽しめる方にはいい
のかも…?だが、駄目だ、あっしは駄目だ!!…原作知らなかったらいけたかな…??
そもそも“原作”っつうのが虫が好かん。他人の褌で相撲をとりながら、都合のいい
トコはテレビ仕様でアレンジしちまうし。“原作”っていえば、テレビでは何やっても
いいんか?テレビマンはウケればなんだってするのか?創作の精神はどこへいったよ?
志向と嗜好と思考の狭間で感情は入り乱れていろいろあるが、モノ作りの端くれの末端
の一人として、今野人気に便乗して元ネタを歪曲してよしとするその浅ましさは如何に。
元々好ましくない安積がいっそう好かくなってしまうわい
※なんでスポンサーPが問題かっつうと、ワタシが絡まっている仕事がPの東北北海道管
轄の仕事で、またこれがえらく怒り心頭発狂寸前。「非買運動したる!!」つうもんで
なんてこったい!生温い話題取りはしないでほしかった…原作だけ、文字だけでいこーぜ?

【鋼】22巻。ハボック、オトコマエで登場
なのに…見た瞬間「チャ●レイ夫人の恋人!?」!!!。なんてこったい!!
役はさておいてだな、そんなことを思った自分のお歳とでもそー思っちゃったんだも~~ん
にトホホ☆
とにかく、単行本派としてはハインケルが心配だ

【政宗さま】…まーくんならぬまーちゃん
火曜→水曜深夜にも関わらずアニメが放映されたのをきっかけに、BASARAな話題を
目にすることしばしば
先だっては某神社にBASARAな(っつうか腐りオトメ的な)絵馬が奉納されてあれや
これやな新聞記事があって思わず動揺。ドキドキ☆腐るのは好きだけでど、穏便にいこー
やとこっそり冷や汗を拭う
ちなみに、某客先のUさんとまーちゃん話題になった時、「ワタシゃ政宗くんでも小十郎
でもなく…左馬之助なんす…」と呟いたら、「えみさんこそすっごいマニアじゃないですか
!!」と返された。…まにあ?…マニア?…うわーん、なんてこったい!!左馬之助と孫っ
ったら伊達の王道じゃないの?(笑)

次こそは須田チョウと黒木くんのほのぼの失笑話をアップしたトコですな
 

【旅立ち】孫左馬@伊達家臣

 投稿者:えみ  投稿日:2008年12月14日(日)21時22分2秒
  「…帰ってこられるだろうか…」
木々が頭上で激しく揺らめき、川からの風が渦を捲いていることを知る
「帰ってくる。帰ってくる。お前なんぞ殺しても死なん」。

「海の…遥か、向こうだぞ…?」
「九州まで行ってしまえば、ここからの京と大差ないわ」。
座り込んで抱え込んだ両膝に顎を埋めて左馬之助は呟いた。
「ようやっと…岩出山に落ち着いたと思ったのに…」。
「また戦か…」。
左馬之助の後れ毛が旋毛風に揺れる
「何を言う。我らそれが生業ぞ?」
「…分かってる…が、な」

八幡宮は岩出山城を南から眺め、眼下に左馬之助の屋敷を見る
風は木々を揺らし、江合川の響きをつれてくる
「川の流れの違いにも馴れて、ようやく腰を据えるかと思ったのに、また戦だ」。
左馬之助は改めて両膝をぎゅっと抱いた。
小さく呟く声を風が攫って、その肩が頼りなげに見えた

「おぬしらしくない、な」
膝を抱く左馬之助の後ろに立って腕組みをしていた孫兵衛は、ひょいと左馬之助の顔を覗き込む。
…左馬之助…
心なしか頬が痩けたか?心の臓の具合が芳しくないと伏せっていたことは知っていた
が、憑き物が落ちたような左馬之助の顔色(がんしょく)に孫兵衛は言葉に詰まる
線は太くもなく細くもなく、さして長いわけでもない睫毛が俯いた瞼に翳を落として、切っ先と突きつけんとした猛々しさが信じられないほどの頼りなさを滲ませて、小さくなっている

「生きて…」
「……」
「帰ってこられるかなあ…」

顔前で覗き込む孫兵衛の顔を笑いながら、左馬之助は見上げた。
零れんばかりの笑みを浮かべて
上目遣いに
少しだけ…
…少しだけ
ふしだらな色を浮かべて…

「帰ってくる!…帰ってくる!!」
孫兵衛は頭(かぶり)を振った。
左馬之助の垣間見せた表情が妖しくて怪しくて…儚くて
…待つ身としては心もとなくて、不穏で不安で、寂しくて
「おぬしはここに帰ってくる。殿のトコロにも奥方のトコにもちゃんと帰ってきて、某に朝鮮の話をして聞かせる」。
「分かってるな?」。

何日あたっていない髭なのだろうか
無骨で厳つい孫兵衛には似合いすぎる強面の髭面で言い募る姿に、左馬之助は相好を崩した
「孫兵衛は待っててくれるか」。
「当たり前だ。おぬしがいて某。鶴もびっくりの首を長くして待っておる」
「……」。

「待っていて、くれるか…」。

傍若無人な風は城から勢いよく走り、小川を越え、八幡宮を揺らす
その力任せな勢いに左馬之助は不安定な姿勢のまま揺らぐ。
その身体を、孫兵衛が両腕に受け止める
「………孫兵衛?」。
受け止めた勢いで、掌で左馬之助の髪を撫でた。
「また…」
「?」
「こんなことをすると、またおぬしに決闘だとか言われそうだがな」
孫兵衛の頬は赤らんでいた。本人にもよく分からないけれど
でも、今はこうしなくてはいけないのだと本能が囁いて
左馬之助を抱きとめる
「おぬしを見ていると、ばっち(仙台弁で一番下)の弟を見ておるようで…」。
「…弟御?」
「ああ、どうせ馬鹿にしているとかどうだこうだ言いたいのであろう?…それは受けて立つ。それまで留守居役で待ってるからの。おぬしが帰ってきた時に白黒つけるとしよう。ただ…」

「今は…」

「兄ぐらい…近しい者のキモチでいさせてくれ…」。

“兄弟じゃイヤなんだ…”
孫兵衛の腕に顔を埋めながら、左馬之助は聞えない小さな声で囁いた
後藤は…
孫兵衛は…
“某自身は男はどうも、な”
と笑ったけれど、
左馬之助は胸の奥に封印してもまだ、
孫兵衛に心が傾いて
恋しくて
切なくて
愛しくて…

帰りたいのはこの岩出山の大地。岩出山の空
川が流れ、水流が響く
切り取られた空が広がっていて果てしなく続く
そして
「無事で冗長!」
と髭面を零して笑いながら抱きとめてくれる野暮で太い腕

ここに
帰りたい
 

冷え性

 投稿者:えみ  投稿日:2008年11月 9日(日)21時41分9秒
  お寒い世の中
経済も寒いが政治も寒い。世情も寒けりゃワタシの身体も寒い
稀代の暑がりは稀代の冷え性なのだ(暑がりじゃなくて“のぼせ”説
有力。真冬は足元にあったはずの湯たんぽを何故かだっこして朝にな
っている不思議)

村雨は冷え性っぽい気がする(笑)
女性は覿面だけど、男性も30も半ば過ぎるとアレコレくるんだ(聞き取
り調査済み)
で、妄想

聞き込み帰りの夜風に冷え切って色のない表情(かお)の村雨
「…村チョウ?」
硬直している村雨の手をとった桜井がその冷たさにびっくりする
「大丈夫ですか?」
「…ちょっと冷えてきた…」
返す笑みが強張っている
「…応急処置ですね」
桜井はとった村雨の手を、自分のスラックスのポケットにつっこんだ。手を
繋いだまま
「!?」
「少し温かいと思います」
形ばっかのポケットですからねー。なんかごもごもしますけど
薄い生地の下に桜井の脚の温もりと、歩くたび収縮する筋肉がリアルに感じる
薄暗い歩道
街灯が疎らで、この傍になくてよかったと、
為されるがままで村雨は、
赤らめた顔を隠すように歩いてる

…このネタで小話を書くつもりだったけど、吐いちゃったからいいや☆
某様御宅の桜井くんと村チョウがほのぼの可愛らしくってうふふふふです
わんこ桜井なんて巧いこと言った方がいたもんです(笑)
 

【シアワセなヒト】ヒグっちゃんシリーズ@今野

 投稿者:えみ  投稿日:2008年10月13日(月)20時34分40秒
  樋口はヘッドレストに後頭部をしたたかに打って息を呑む
身体の奥を緩やかに嬲っていた氏家のそれが焦らすだけ焦らし、乾いてひりつくような掠れ声を樋口が洩らした瞬間(とき)だ
路地を幾度も曲って辿り着いたそこは男同士で入っても咎められない場所で、コギレイでいかがわしさも淫猥さもあまり感じさせないけれど、垂れ流しの精液の匂いがこびりついている気がどこかするのは樋口の負い目なのかもしれない
それでも、ネクタイを解き、ワイシャツを脱ぎ、ベルトを外し、猛々しい氏家に身を委ねる
一抹の罪悪感と、身を浸す愉悦と
荒々しい仕草に身体を明け渡し、
自分のせいだけではない、と
求められたままに応じているだけだ、と
言い訳を並べて、
終(つい)の悦楽を望んで腰を振る

「続きはあんたの口からおねだりを聞いてからにしようか」。

氏家は硬いままの自身を樋口から引き抜くと、それまで氏家を咥えて慄いていた窪みをじっくりと眺めるべく、樋口の両膝を力任せに掲げる
「…っ、何…する気だ…」
「何もしないさ。あんたの可愛いお口をよっく見せてもらうだけだから」
「や、めろ…」
「なんで?可愛いよ。綺麗な色して、ぴくぴくして…ちょっと爛れてるかな…でも、まぁ、上手に咥えてくれるんだからたいしたことないだろう?」
両膝を掲げられたその恰好は、見たくもないのに男根が屹立して濡れて興奮しているのを樋口に目の当たりにさせる

「道具ってなぁ使い込んでこそだろ。あんたのお道具もちゃんと使い込まないとただの穴になっちまうぜ」。

心地良い波から中途半端に放り出されて途惑う樋口の蕾を、氏家の指は翳め、そこに言い聞かせるように吐息で擽(くすぐ)る
それが樋口の下腹部の奥をじんわりと刺激し、樋口は崩れてしまいそうになる
口を開くと怖いから、
意識が飛んでしまうのが怖いから
なけなしの理性を呼び起こし、眸(め)を硬く瞑ったまま、自分の性欲を否定する
そして
シーツを固く掴んだ
拒まないけれど、自分ではのらない
自分では折れない
でも

でも…行き着きたい…
樋口は口唇を噛み締めた

「あんた…ホント、お姫様だよな」
「…なに、が…」

噛み締めた樋口の口唇を氏家の指が乱暴に抉じ開け、行き場に途惑う滑(ぬめ)った舌をあしらうと身体を起こし、そこに自身を納めた
「咥ろ…上手にしゃぶれ。満足させろ」
氏家の声は冷たい

「この商売していて、加害者が被害者ヅラするのにうんざりしねえか?」。
「正直、分からんねえ訳でもないこともあるけどな…ただ、てめえはそんなに美しいかって罵倒したくなることもあるだろ」。

「あんたさ…」
「全共闘世代に尻拭いさせられた被害者だって思って、組織じゃ当り障りない顔して、小娘に夢中になればそれは相手が悪いってツラして、周りにイイコイイコで大事にされて、甘く見てもらえてるのを知りながら、自分は時代と組織の健気な被害者って思ってんだろ?」。
「今日だってついてきたくせに、こうされて、可哀想な被害者だって思ってるんじゃねえの?なあ?」。

冷ややかに嘲う氏家の言葉に、樋口は揺らいだ
肯定するわけではないけれど、見透かされているような所在なさ

「こうやってんのも、スキモノに犯される可哀想なワタシって思ってるだろ?」。
「好きなくせして」。
「なのに被害者気取りだ」。
「あんたほど、シアワセなヒトって見たことないね」。

「壊れちまえよ」。

足元が揺らぐ
樋口の価値観
樋口の物差し
自覚したことはないけれど、おぼろげながら分かっていた自分の立ち位置と判断
それを
見透かされて
叩きのめされ
よりによって恥ずかしい姿で突きつけられる

「見届けてやるから、さっさと壊れちまえ」。
「…壊してやるから」。

氏家の声が樋口の耳から脳内を浸食し、下半身を穿たれている痺れを招く
麻痺した理性の、甘美な崩落

「…じゃあ、続きを始めるか?」。

「…おねだりは?なんて言うんだっけな?」。
 

【戯言】ヒグっちゃんシリーズ@今野

 投稿者:えみ  投稿日:2008年10月 7日(火)00時08分57秒
  エレベーターのドアが開くと酔客が転がるように降りてくる

「減るもんじゃあるまいし」
入れ替わりにそれに乗り込むと、間髪入れず氏家は言う
「…減るもんじゃ…ないがな。…ないけどな…」
ドアの前に立つ氏家の背中に、樋口は言葉を濁しながら返した
雑居ビルのエレベーターは狭い。オトコふたりがいればそれだけで息苦しくなる
「ガキが出来るわけじゃあるまい」
樋口の返答に氏家の背中が嘲っていた

「いや…」。
「あんた、強そうだから子供のひとりふたり出来そうだ。勘弁してくれ」。

冗談で済ませてくれ。冗談なら冗談で返すから、と言葉を選んだ樋口に、氏家は
ツレない
「そんなにタフじゃないんでね。あんた孕ませる自信なんてないし、第一、俺は
ガキなんていらない」。

くたびれ果てたビルのエレベーターは樋口の動悸に似た奇妙な音をたてながら、
目的の階に間もなく着く
たかだか数十秒の時間なのに息苦しい
階数表示から目が離せない
解放してほしい

電子レンジに似た軽く軽薄な音を耳にして、ドアが開くのを心待ちにする瞬間、
氏家は淫靡で悪辣とした笑みを浮かべて振り返った
「くだんない問答なんかしてないで、あんたんトコ引ん剥いちまえばよかったな」。

「…ひどい冗談だな…」
樋口は自分の声が乾いているのが分かる
「戯言にしては心臓に悪い」
背中に妙な汗が伝う
「冗談?」
樋口の必死の抗いをものともせず、氏家は意外なほど軽やかに微笑んだ
「こんなトコロでほざく言葉が冗談だと思うなよ?」。

「ふたりっきりに戯言ってえのは大抵シャレにならんほど本気なんでな」。

総毛立つ
…悪魔がにったりと笑ったような、樋口はそんな気がしていた
 

【不意打ち】安積班@今野

 投稿者:えみ  投稿日:2008年 9月29日(月)22時48分31秒
  桜井は少しぼんやりとした眸(め)をしていた

あの暑さはなんだったのだろう
夏になれば冬を忘れ、冬になればコンクリートを煽る熱波すら記憶の彼方だ
ここ数日空気は乾き、朝晩は冷え込む。昼間動き回って汗を掻いている感覚で油断していると、夕時の風の冷たさに驚かされる
つい先日まで季節の移ろいは陽光の色と翳りにそこはかなさを感じさせていたのに、あっという間に変化(へんげ)を遂げていた
近くの公園の萩の花はその小さな花弁で路上をささやかに彩り、もう間もなくどこからか芳しい芳香が漂ってくるのだろう
…金木犀
“それぐらい、俺だって知ってる”
村雨はネクタイに手をやった。
今日も一日が始まる

「寝て、ないのか?」
部屋を出ると、村雨は先を行く桜井の背中に尋ねる。覆面のキーは桜井が持っていた
「…寝てますよ?」
「目がぼんやりしている」
体力と気力が勝負のこの商売で、相方が不調というのは痛い。むしろ致命的。行動範囲が狭くなるだけでなく融通が利かない
そして
それはさておき、やっぱり気にかかる
「たいしたことないんですけど…少し頭が重いっていうか痛くって」
桜井は振り返りもせず、コメカミを押さえる仕草をした
「でも、さっき痛み止め飲んだから平気です」
相変わらず振り返りはしない
こういう時の桜井は本気で調子が悪くて、それを見せないように振る舞うトコロがある。つまりは本当に調子が悪いことと言っているわけで
察することと裏読みが鍛えられる仕事だ。ばれているし、ばれているのを知りながら、平穏を装う
「夏のまんまで、素っ裸で寝ていたんじゃないのか?」
「一人でそんなカッコで寝ませんよ、ね?」
「…あのな…」
村雨は思わず頬を赤らめる
「平気です」
背中で桜井は言う
言いながら、ようやっと振り返る。笑いながら
「ホントに平気です。まずいと思ったら言いますから。大丈夫です」。

「…運転換われ」
「平気です」
そんなことしたら、村チョウ何したんだって周りがびっくりしますよ
「俺の生命(いのち)が関わるって言ったら?」
一蓮托生、無理心中ぽくてよくないですか?
「…よくない」
「ホントに大丈夫ですって」

階段を降り掛けた桜井は背中を向けたままで、村雨の言葉は宙に浮く
ずいぶん逞しく、ずいぶん頼りになるようになったが、ここまであしらわれると却って寂しい

「桜井」
二段先を行く桜井を村雨は呼び止める
「はい?」
ちょいちょい。村雨は手招きをした
そして、周囲に誰もいないことを速攻で確認する
二段差はすくすく育った桜井と村雨の差を補うには充分で、村雨は桜井の前髪を払うと額に自分のそれを中てた
「…ちょっと…熱いな」
「村チョウ!?」
泡を食う桜井の眸(め)を恥ずかしながらもじっと見つめ、村雨は自分の行動の照れながらももっともらしく呟いた
「ま、危なくならん程度に気合いれてくれ」。

本当にふたりきりの時には妙に強気な色を見せ、押すことはあっても引くことのない桜井の眼差しの光が、不意打ちに揺らめいて動揺しているのが手に取るほどに分かって、
村雨は満足する。
満足して
桜井が本当に具合が悪くて寝込んでも、一緒にいてやれないから
せめてココだけ
気遣うだけ気遣って、傍にいたい
公私混同だと分かりながら、
不意打ちに揺らぐ眸の生々しさに、
桜井の青臭さが可愛らしいと思うのだ

「ガキに強情張られんのは慣れてるんだから、ナメるなよ」。
村雨は勝ち誇ったように笑った
それに釣られて桜井も笑う

今日も一日が始まる
 

【ほっといてくれ!】ヒグっちゃんシリーズ@今野

 投稿者:えみ  投稿日:2008年 9月15日(月)21時10分26秒
  報告書なんぞあったままを書けばいい
分かっているが単語と文章が頭のなかに集まっては霧散し、カタチにならないモヤモヤだけを作り、氏家は今日の業務を止めることに決めた
机の右側、ファイルが並ぶその上に放り投げて明日の業務とする
「氏家、あがりか?」
「まとまんないすから。止めです、止め」
氏家は伸びをして笑った
「明日やりゃあいいもん、ごちゃごちゃになってまでやることないです。あがりです」
上は会議のあった日だ。午後9時。こんな時間になっても課長がいた
「…今年の新人はどうだ?」
「拝命したばっかすからね…も少し揉まれれば、顔つきが変わるんじゃないんすか?」
「だよなー。なんかお坊ちゃんお嬢ちゃんばっかで、俺りゃ不安だね」
「…俺も課長も、拝命したばっかの頃はそう言われてたんすよ」
「…まったくだ」
課長はおかしげに笑うと、煙草に火を点けた
「ところで、氏家でいくつになった?」
「新人と比べるのは勘弁ですよ。38です」
「え?」
「?」
「おまえ、そんなになってたのか?」
「そーすよ?」
「38なんて40じゃないか」
「そりゃあ…40間近ですけど、38です」

おいおい、おっさん、数数えられないんかい

「なぁ…氏家?」
「…はい?」
「おまえ、結婚しないのか?」
「は?」
「なんで結婚しないんだ?」

樋口に話したことをここでいちいち説明するのは億劫だ
「…結婚しないんじゃなくて、ぼんやりしてたら38だっただけなんすけど」
曖昧にテキトーに返す
この業界、無難な返答だ
「おまえ…あのな」
「?」
「俺が言っちゃあなんだが…おまえ、オンナの興味がないんじゃねえかって噂があるんだぞ?」
「は??」
「いろいろやってるよーだが、それは建前で…」
「建前?」
「本当はオンナが駄目だとか」
………
「き、期待に添えなくて残念ですが、俺、身心とも女性は大丈夫ですから…」
「本当か?」
「本当です!」
大丈夫、大丈夫、オンナに関心もあるし、やることも出来る。やってるから、おっさん、安心しろ
でも、
でも、
オンナ以外も大丈夫だ

午後9時。
樋口はまだ机に向かっている頃だろう
ここで「うちの課長があんたに用事があるってよ」と呼び出したら、あいつのことだ、きっと間抜け面を晒してくるだろう
そこで、
「課長、俺の目下のお気に入りはこいつなんで…飽きるまで結婚はなさそうです」
と言ったなら、あいつも課長もどんな表情(かお)をするだろうか
樋口を甚振る(いたぶる)には序の口過ぎるが、きっとあいつは硬直して、それはいっそう嬲り甲斐があって
それはそれで楽しいシチュエーションだ

氏家はうっすらと口許に笑みを浮かべながら
それにしても、
知らないところで楽しそうな話題になっているのは
不本意でがっくり力が抜ける。
楽しい話題なら、正面きって俺に言え!!

「38の独りモンだからって…」

こんなに珍獣のような扱いを受けなければならないものなのだろうか

「ほっといてくれ!」。

課長に聞えないように呟いた
たいていのことは凌げる氏家にも、かなりのトホホ感のある顛末
ちょっと堪えてる
…堪えてた…
 

【淵】安積班@今野

 投稿者:えみ  投稿日:2008年 9月14日(日)22時27分8秒
  「桜井はずいぶん逞しくなったな」
「…ん?」
強行犯のメンツは各所に出払い、徐々にそれぞれのシマの電話が鳴り響き出す
連中を見送り、決済箱に積まれた書類を手にした安積に速水が言った
「何してるんだ」
「パトロールだよ」
「パトロールがシマのなかまで入ってくるか。早く帰って寝ろ」
「帰るさ。年寄りは睡眠不足が一番堪える」
速水は夜勤明けだ。さっさとあがればいいものを、署内を、それも縄張り外の二階をうろうろして歩いている
年齢でひと括りにするならば立派な中年だが、それ以上に見事な体躯の速水が署内を歩いているとそれだけ威圧感がある。若さにいきがった小僧どもを圧するには充分だが、署内にもその影響はかなりある
もっとも、
見栄えや肩書き、武勇伝に腰が引けるオトコどもよりも女性は柔軟かつ大胆で、「速水さんー」と鍛えられた腹に軽いストレートを入れて挨拶していく
「おまえな…」
安積が呆れて溜息をついた時、窓の外から奇声が聞える
慌てて覗き込むと、黒木のスーツのズボンの裾に太一郎がしがみついていた
泡を食う黒木と必死な太一郎と、傍らで太一郎の“おとーさん”石倉が笑っているからたいしたことはないのだろう
「勢い余って尻尾でも踏んだんじゃないか?」
「…うん」
“太一郎”とは、臨海署に届けられた落し物ならぬ落とし犬で、鑑札課の石倉が“おとーちゃん”を買って出ている。署内で落とし犬を飼うのはありなのか、というツッコミは満載なのだが、石倉のキャリアと性格がそれを可能をしていた。落とし犬に何故“太一郎”なのかと安積は以前尋ねたが、返事は安積には理解できないもので、そのまま太一郎で通っている
黒木の裾を咥えて踏ん張る太一郎相手に必死で格闘しているのは意外にも村雨で、その様子に須田と桜井は笑い転げていた
「何やってんだ、あいつら」
安積は呆れて席に戻った

「書類を見ても、な」
安積は手にしたそれをトンと指先で弾いた
「桜井はしっかりしてるよ。逞しくなってる。ケチのつけようがない」
「そうか」
「おまえに今さら言われなくても分かる」
分かるから、早く去ってくれ
言外に安積は示したつもりだったが、
「先輩たちの、先輩の教えがいいからだろ」。
「速水?」
速水は笑った。
「阿呆な上司だの先輩だのにつくと、まっとうなヤツでも阿呆になるからな」
「…村雨、か?…」
笑顔で楽しげに言う速水に、安積は少しばかり暗い表情(かお)で返した
「…あいつは杓子定規で堅物だからな。桜井のことも枠に嵌めようと…枠に嵌っていられるように躾てるんだろ」。
「この組織で生きて行くのは正解だがな、いいのかどうか…」
安積はハンコを取り出して、桜井の仕上げた書類にきっちりと印を押す
その仕草を、デスクに寄りかかりながら速水は見ていた

「桜井、最近は村雨に“俺”って言うのな」
「?」
「ついこないだまで“僕”だっただろう?」
「そうか?」
「そうだ。気がついていなかったのか?」
「知らなかったな」
ハンチョウ、おまえさん、刑事(デカ)だろうが。気づけよ
やることが多過ぎてそこまで気がまわらん
「くだらんことはいいから、早く帰れ」。
「帰るがな…」
あれは、桜井は村雨と対等でいようとする気合だぞ
「村雨のやり方になにか不満を感じているのかもしれないな」
「…おまえね」
速水は溜息をつく
「おまえ…同属嫌悪だな」
「何が」
「村雨」
「…そんなこと…ない」
痛いところを突かれたのか、安積は言葉を濁して決済箱を見つめたままだ

「ハンチョウらしいな」
「だから、何が」
「自分で気づけよ。開きめくら」

でも、恐らく、
おまえさんが気付くより早く、
あいつらは成長していく。公私とも逞しくなっていく
桜井だけじゃなく、黒木だって、須田だって、村雨だって、足腰がしっかりしていく
おまえを凌いでいく
「もうちょっと、視野を広げろよ」。
ま、そんなちまっこいおまえが可愛いと思うだがな
「帰るわ」
背中越しこっそりウィンクを投げて寄越し片手をあげる速水を安積は恨めしげに見送った
生安課の女性刑事が親愛を込めて速水の背にカンガルーパンチをかまし、速水が応酬する

その様子が明るくて
明るすぎて
自分の淵がいっそう暗く見える…
 

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